ぴえん田支店長の恐怖蒐集日記

ホラー好きが出会った怖かったものついて書く備忘録です

問乃みさき『27時の怪談師』の感想

問乃みさき『27時の怪談師』角川ホラー文庫、2019年

 

○あらすじ

  事故物件から事故物件へ移り住み、凄腕の霊能者でどんな悪霊でもあの世へ送り、次々と告知義務のない物件に塗り替えてくれるプロの住人、通称・棲師、亜嵐。実は彼は、人に会わずに暮らすために事故物件に住み告知義務を消すということを生業にしている極度の対人恐怖症の引きこもりだった。引っ越し直後の〈亜嵐〉のもとにやってきたのが真実を語る怪談師、弔ナイト。弔ナイトは亜嵐の住む事故物件にまつわる怪奇現象の謎を解くためにやってきた。関係者への聞き込みなど調査を行う弔ナイトと、それをもとに推理する亜嵐の二人が、事故物件の怪奇現象の裏に潜む真実を明らかにする。

 

○感想

  「住むと不幸になるマンション」と「7回見ると死ぬ夢」という怪奇現象に関する2話が収録されていて、どちらもあらすじでまとめたように、ナイトが調査を行い、亜嵐が推理するという話の流れだった。2人のキャラ設定が強烈でいて、しっかり設定を活かした役割分担になっていたので、読みやすかった(著者は角川文庫キャラクター小説大賞を受賞しているらしい)。面白い。

 たとえば亜嵐は引きこもりでいつもネットでいろいろなことを調べているので、ナイトが持ってきた情報についてよく知っていたり、情報をつなぎ合わせて考えたりすることができていた。ナイトは、まず超絶美形ということで関係者を取材することができたりホスト業界にもすんなり入り込むことができていた。

 心霊描写としては、亜嵐の前にがっつり視覚的に霊が現れる(ただし、ナイトには特殊能力が全くないので認識できない)。霊が出てくるシーンには確かに怖さはあるが、どちらかというと読者を怖がらせるというより、事件の発端となる怪奇現象として描かれているだけに感じる。本の帯に書いてあったように「怪異ミステリ」という感じで、謎解きに重きが置かれていると思う。

 内容については、人や霊の怖さ以上に優しさがテーマになっていると思った。あと亜嵐の過去のトラウマ、幼少期にナイトだけが生き残った比良坂一家惨殺事件といったように今後ストーリーが深められていきそうな記述がいくつかあったので、シリーズ化してほしい。

 またちょっとネタバレになるけど、最後に絶対に家の外に出ないと言う亜嵐を台車に載せた段ボールにいれて、歌舞伎町の街並みを眺めながら2人で移動するシーンはとてもよかった。対人恐怖症の亜嵐が早くもナイトと信頼関係を構築していっているように感じた。 

 

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問乃みさき『27時の怪談師』角川ホラー文庫、2019年

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